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◆ n.53 ブローチの世紀 ◆
ー パワージュエリーの訳は? ー
ブローチってどんな風に着けたらいいかしら?
ピンを挿すから着ける服や素材を選びますし、
でも、素晴らしいジュエリーにはブローチが多く、クラシックな感じもやはり魅力的・・・
と思っていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
そんなブローチの起源は、
古代ギリシャ、ローマ時代に遡ります。
( 古代のフィビュラ型ブローチ 詳細はここをクリック )
古代の衣服は下の画像のような、布を身体へ巻き付けるだけの “ トーガ “ と呼ぶものでした。
巻いただけでは落ちますから、留め付けに「フィブュラ」と言うピンを使いました。
上の画像をご覧下さい、これは19世紀に古代の形にインスピレーションを受けて作られた「フィビュラ」型ブローチです。
古代では、はじめはより実用品的でしたが、すぐに上の形のような凝った細工のものが作られました。
金細工や宝石、カメオやインタリオが飾ってあるものがあり、
装飾によって社会的な階級がわかりました。
そして、特に黄金や宝石のついた「フィビュラ」はだれでも着けたわけではなく、
特に知的階級で権力を持つ男性用として、皇帝や元老院の人々が身につけるものでした。
「フィビュラ」の後の過程には、
北ヨーロッパのケルト人の着けた下の画像のようなブローチがあります。
これはアイルランドのタラで発掘された8世紀頃の装飾品を、19世紀に復刻させたブローチです。
丸い部分は手の平ほどの大きさがあります。
地中海沿岸と違い、寒い国で衣服も厚手で皮革も身につけましたから、このような大きさに太いピンだったのですね。
1000年を過ぎる中世時代には、
宗教画の中の天使や聖母マリアが着けているような、
丸や四角、菱形などのブローチが登場します。
またこの頃には服の留め付けにはボタンが 登場し、
ブローチは、より装飾性の強いジュエリーとなっていきます。
( ブローチ シエナ美術館蔵 イタリア )
上のブローチはイタリアの11世紀前半と考えられるジュエリーで、
金に細かな細工を施し、真珠と宝石にガラス珠で飾っています。
大きさは7cmほど、中世時代のジュエリーは後世に溶かされたものが多いため、このように現存しているのは大変稀少です。
さて、以上のような歴史を持つブローチは装飾として社会階級を示しただけでなく、
動物のような毛皮を持たない人間の身体を守る衣服を留める、
「要」であり「守護のシンボル」でもあったのです。
その上、人間ならではの、頭と手と感覚を使った見事な装飾を施すようになりました。
ところで、他のジュエリーとブローチの違いはなんでしょうか?
それは肌に直に身につけず、衣服の上から着けるジュエリーであることです。
上のような歴史から、ヨーロッパのジュエラー達は競って美しいブローチへ力を注いできました。
ヨーロッパでは服装の上でも、いにしえからの社会的なプロトコル(儀礼)が続いています。
そのためスーツやジャケット+ブローチの出番は多く、今でもその傾向は強く残っており、
有名なカルティエのウィンザー公爵夫人のための数々のブローチの名品が作られ、
王室の人々はブローチを愛用しているのです。
ブローチは少し厚手の衣服に合いますね。
ずいぶん前からカジュアル傾向のファッションが続いていますが、
ここ数年はワンピースが流行り、
新しいスタイルのスーツというと少し堅苦しいので、" セットアップ " と言いましょうか、
そんなスタイルが注目を浴びています。
体型をより素敵に見せたり、重ねた年齢を充実したものに見せるという、
服の本来の力を生かす方へ、じわじわと変わって来ているのはたしかです。
日本には " まず相手を想う " という文化がありますが、
ココ・シャネルの言った
「装いは自分の為だけでなく、相手と場を考えること、それは相手を尊重することでもある。」は、
あらためて見直したい日本人の感性と、響き合うように思えます。
さて、ブローチの着ける位置、それは
出来るだけ上に、
お顔の近くに、
が鉄則です。
大きいのも小さいのも、サイズは関係ありません。
時には下の方に着ける場合もありますが、それはかなりの上級者、
服のデザインとブローチがぴったりと合っていないとなかなか綺麗には見えません。
まずここでご紹介しているブローチの達人、
ウィンザー公爵夫人とエリザベス女王の画像を是非ご参考になさって下さい。
特にウィンザー公爵夫人はブローチ好きとして有名で、
沢山のブローチを持っていましたし、着け方も参考になりそうです。
ジュエラーが最も力を入れたジュエリー「ブローチ」、
今再び新しいスタイルのファッションとともに、その魅力を利用する時代が来ています。
そこで、次のジュエリー&モードの物語では夫人のブローチ・コーディネイトをご紹介していきます。